江戸検の王道!山本博文著『徳川将軍15代』発売!
徳川将軍家を「血」で読み解いていく画期的な本ができました
山本博文・東京大学史料編纂所教授著『徳川将軍15代~264年の血脈と抗争~』(小学館江戸検新書)です。
初代家康から始まった徳川将軍15代の歴史は大きく5つに分かれます。
①第2代秀忠から第4代家綱までが「宗家嫡流の時代」。
②5代綱吉から7代家継までが「宗家傍流の時代」。
③8代吉宗から10代家治までが「紀州系の時代」。
④11代家斉から13代家定までが「紀州系傍流の時代」。
⑤14代家茂、15代慶喜が「紀州系強化と初の水戸系の時代」
平和な264年間が続いた江戸時代ですが、将軍家の継承は建前としていた嫡子相続が乱れ、血筋が大きく混乱して、実は波瀾万丈だったのですね。
①から②への継承を例に具体的に説明してみましょう。
秀忠、家光、家綱まで、長男ではなくとも実子であった人物が跡を継いでいました。いろいろありましたが、まずは順当な継承でした。
ところが、第4代家綱は跡取りの男子がおらず、嫡男が継承していく血筋はここで途切れます。
家綱は腹違いの弟を養子にせざるをえなくなりました。家光の男子のうち、長男家綱の他に、三男の綱重、四男の綱吉が成人しています。
長幼の序でゆけば、綱重が跡を継ぐことになりますが、家綱臨終の2年前に綱重は亡くなり、その長男の綱豊が甲府藩主となっていたのです。綱重の嫡男であるので、綱豊も十分資格があります。
しかし、結局傍流の傍流にもかかわらず、館林藩主である四男綱吉が家綱の養子となって第5代将軍となりました。
宗家の血筋の大きく乱れ、傍流時代に入ったのです。そこからは何でもあり、といっては語弊があるでしょうが、抗争と遺恨が渦巻きながら、幕末まで徳川将軍家は継承が続いていったのでした。
この『徳川将軍15代』は、その「壮大な血脈ドラマ」を、余すところなく描いて興味が尽きません。
読むにしたがって、「そうか、この将軍の時に、この人物が出てきて、こんな事件が起きたのか」と、漫然と年表を読むより、良く頭に刻み込まれます。
江戸検受検者には「必読の書」ですね。
お薦めします。(彦)